PROJECTProject

PROJECT02

グループ各社の経営状況を正確に把握し、
数値に基づいた適切な判断をタイムリーに行うための経営管理基盤「B-DAP」の構築。

業界 メーカー
クライアント ブラザー工業株式会社
プロジェクト期間 約50ヶ月(2021年3月現在)

サマリー

世界中に販売会社・工場を持つブラザー工業株式会社では、グループ各社が独自のBIツールを使用しながら経営管理の分析を行っていました。しかし、BIツールの違いや売上数字等を集計する範囲の違い、会計基準が国ごとに異なるなどの問題点から、グローバル経営において、同じ経営数値を基にした共通認識を持つことに時間を要していました。

そこで今回、ブラザーグループが構築・実践する「BVCM(ブラザー・バリュー・チェーン・マネジメント)」をより早く正確に実行する方策の1つとして、世界共通の新たな経営管理基盤「B-DAP(Brother Data Analytics Platform)」を構築。アビームシステムズのメンバーが米州・欧州・亜州の海外販社・工場を駆け回りながら、クライアントの目指す「グローバルOne Data/One Report」の実現に貢献しました。

プロジェクトの課題

  • 経営管理用データを算出する計算ロジックや会計基準、BIツールが国ごとに異なるため、本社・グループ各社で数値を基にした共通認識が持ちにくく、経営会議で数値の整合性を確認するために時間を要していた。
  • また同様に、販売数量(実績、予定)や在庫状況の認識に齟齬が生じることもあり、販売拠点への製品供給の遅れや工場での生産数の調整などに時間がかかっていた。
  • 海外拠点ごとに持つSAPの使用方法、発生データの違いを把握し、本社・グループ各社それぞれの視点での経営数値の利用方法を理解するためのヒアリングと要件定義を行う必要があった。
  • 世界中から届く経営データをひとつのデータ共有基盤(B-DAP)に集約することから、数億件にのぼる膨大なデータを適切に処理する仕組みを検討する必要があった。

課題に対峙した
ABSのアイデア

  • 経営基盤グループA.M

    経営基盤グループA.M

    「グローバルOne Data/One Report」の実現には、グループ各社が個別のBIツールで行っていたデータ活用をひとつに統一する必要がありました。そこで各社のSAPデータを連携するデータ共有基盤「B-DAP」を構築。BIツールはさまざまなツールを機能検証した結果、現場主導で活用できるBIプラットフォームである「Tableau」が優れていると判断し、グループ会社全体への展開をブラザー工業様と協議のうえで決定しました。

  • 経営基盤グループS.K

    経営基盤グループS.K

    当プロジェクトでは、世界各地の販社・工場に当社メンバーが何度も出張し、現地ユーザーと膝詰めで会話しながら要件定義を詰めていくことに大きな苦労がありました。国内の開発チームとは逐次Web会議を行い意思疎通を図るとともに、時差の利用により翌日には日本で対応を進めていた開発側のフィードバックを遅滞なくユーザーに共有。チーム全体で協力し合いながら進めるなど早いスピードで構築を進められたことが、クライアントの高い評価にも繋がりました。

  • インフラソリューショングループY.C

    インフラソリューショングループY.C

    技術的には一度に数億件のデータ処理を行う際に、サーバのパフォーマンスが追いつかない課題がありました。この課題に対しては、データ提供タイミングを考慮し時差を利用したジョブスケジュールを組み立てることで解決しています。例えば日本で入力したデータ処理は、欧州販社の営業時間帯(日本の夜間)に行い、欧州販社のデータ処理は米州販社の入力時(欧州の夜間)に行うなど、24時間休みなくサーバを稼働させることで負荷分散を行っています。

Column

Column

アメリカやヨーロッパなど、世界40以上の国と地域に生産拠点や販売・サービス拠点を持つブラザー工業。グループ各社と本社で数字の認識がずれてしまうというグローバル企業特有の課題解決にあたっては、写真のように幅広い年代、役職からなる当社30名ほどのプロジェクトメンバーが中心となり、クライアントの目指す「グローバルOne Data/One Report」の実現に貢献していきました。

プロジェクトの成果

  • 各国の経営データを共通基盤に集約したこととBIツールの統一により、経営会議での共通の数値に基づいた適切な議論、意思決定が実現し、今まで以上に高度な経営管理が実現できている。
  • 各海外販社の在庫状況が正確に把握できたことにより、生産数の調整や緊急時の素早い製品供給など、正確かつスピーディーな判断が可能になった。
  • 2020年現在、ブラザーグループ全体で約1,000名のユーザーが「B-DAP」を利用し、数値集計、加工、確認に関しての大幅な工数削減やコスト削減にも貢献した。
  • 各現地ユーザーにとっても、「B-DAP」により経営データの更新頻度の改善や分析作業に関する属人化の回避、作業時間の大幅な削減に繋がったと、感謝の言葉をいただくことができた。

成果に対する「お客様の声」

  • ブラザー工業株式会社IT戦略推進部IT事業推進グループグループマネジャーT.K様

    ブラザー工業株式会社
    IT戦略推進部 IT事業推進グループ グループマネジャーT.K

    アビームシステムズの皆さんには、当社ブラザー工業の海外拠点へ頻繁に出張してもらうことで、現地メンバーとも良好な信頼関係を構築していただき、スムースなプロジェクト推進を支援いただいています。プロジェクトの成果として数字を共通言語化することができ、経営層からも好評価を得ています。

プロジェクトの
アーキテクチャ図

  • Before

    販売実績や生産計画、在庫状況、財務諸表などの経営データ全般を各国のSAPで管理。独自のBIツールで分析されたレポートをもとに、経営情報の共有を行っていました。そのため、同じデータを「本社のBIツールで分析した場合」と「各国のBIツールで分析した場合」では異なる数値が算出され、互いの状況を正しく把握できない状態が続いていました。

  • After

    各国のSAPで管理されている経営データを「B-DAP」に集約し、独自に選定していたBIツールをBIプラットフォームである「Tableau」に統一。各国の担当者は「B-DAP」に統合されたデータを参照し、経営レポートを「Tableau」で作成するという標準的なプロセスが出来上がりました。正しい経営データを共通言語に、世界中のグループ会社と正確なコミュニケーションが取れるようになり、ブラザーグループが構築・実践する「BVCM(ブラザー・バリュー・チェーン・マネジメント)」にも大きく寄与しています。

Diagramプロジェクトのアーキテクチャ図