PROJECTProject

PROJECT03

クライアントとカスタマーを繋げる
AIを活用した次世代カスタマーサポート
「Chatbot」のグローバル展開。

業界 メーカー
クライアント ブラザー工業株式会社
プロジェクト期間 約36ヶ月(2021年3月現在)

サマリー

家庭用から産業用まで幅広い製品を手がけるブラザー工業株式会社では、カスタマーからの問合せに対して、これまでオペレーターが電話・メール・チャット等を介した有人対応を行っていました。そこでアビームシステムズでは、次世代に向けたコール業務のプロセス改善施策として、AIを活用した自動会話プロフラム「Chatbot」の導入〜改善運用を提案。フィリピン・米州拠点での導入から始まった当プロジェクトは、カスタマー満足度の向上とコストの削減に繋がり、クライアントのDX推進事例の1つとしても高く評価されています。

プロジェクトの課題

  • Chatbotの導入については、当初よりグローバル展開を想定。インフラを検討する上では、地域によって情報検閲やAIサービスの規制が異なるなどの問題をクリアする必要があった。
  • Chatbotの運用においては、カスタマーと管理者の両者がアクセスするツールのため、情報漏えいを防ぐためのセキュリティ対策を講じる必要があった。
  • 問合せ内容をはじめ、カスタマーが入力する質問範囲は多種多様であるため、どの分野の質問に対して対応すべきかのスコープの検討に大きな困難があった。

課題に対峙した
ABSのアイデア

  • プロダクション&サービスソリューショングループY.O

    プロダクション&サービス
    ソリューショングループY.O

    当プロジェクトは、顧客満足向上や問合せコスト削減をDXで実現できないかという、上流工程の検討から入った点がポイントです。なぜAIが有効か、なぜ英語圏から始めるか等、新技術をお客様に理解いただく技術検証や下準備も大切なプロセスでした。またChatbotは「どんな問合せにどのような回答をするか」というAIへの教え込みが重要なため、プロジェクト中は海外拠点にも出張。現地オペレーターに協力を依頼し、共に回答のナレッジを作り込んでいきました。

  • インフラソリューショングループH.F

    インフラソリューショングループH.F

    当初よりグローバル展開を想定していたため、法令的にどの地域でどんなAIサービスが提供されているか、データセンターの位置関係や言語環境も細かく調べ上げた上で、Microsoft Azureを使ってのChatbot構築を決定しました。またChatbotは不特定多数のカスタマーが使用する一方で、AIの教え込み等で管理者も頻繁にアクセスします。両者のアクセスゾーンの制限や多要素認証の内容に至るまで、利便性とセキュリティの両立には特に注意して設計を行いました。

  • エンタープライズアプリケーショングループN.O

    エンタープライズアプリケーショングループN.O

    膨大なナレッジをAIに教え込むのにはやはり苦労が伴いました。例えば「トナーがほしい」という問合せでも、文章構造や単語は人それぞれのため、どの言葉が何のキーワードに結びつくか、AIが判別できる言葉に置き換える言語解析のメンテナンスも必要です。素早くナレッジを改善できるようにログ解析を行い、管理者がChatbotへ反映できる仕組みを構築した結果、当初40%程度だったカスタマーの自己解決率を75%まで引き上げられたのには大きな達成感を感じました。

  • インフラソリューショングループY.S

    インフラソリューショングループY.S

    Chatbotは一般公開向けサービスのため監視が必須です。PaaSの複数サービスでの構成により、既存の統合監視システムでは十分な監視ができない課題もありましたが、Azureのサービスのみで監視ができないか、構成を新たに検討し無事に実装ができました。クラウドサービスの制約や特性を理解しながらの設計は大変でしたが、メンバーの進捗を管理しながらインフラ概要設計や運用設計を行うなど、入社3年目にしてとても良い経験を積むことができました。

Column

Column

Chatbotとは、リアルタイムな文字コミュニケーションを行うchat(チャット)とbot(ロボット)を組み合わせた言葉で、あらかじめ想定される質問とその回答のプログラムにより、自動返答を行うアプリケーションです。さらにAIの機械学習の活用により、フリー入力されたテキストからユーザーの意図を理解し、適切な回答を導き出すことも可能になります。代表的なサービスはiPhoneのSiriなど、カスタマーとの新たなコミュニケーションツールとして多くの企業で活用され始めています。

プロジェクトの成果

  • Chatbotを利用した方から「得たい回答がすぐに返ってきて良かった」「時間外の問合せにも返答があって便利」などの言葉をいただき、カスタマー満足度の向上に繋がった。
  • 当初40%程度だったカスタマーの自己解決率は、ナレッジの改善を継続した結果75%に至るまでに回答精度が向上。現在、毎月約1万件の回答が実現し、コール業務の負担が減少した。
  • グローバル環境におけるコール業務のプロセス改善に寄与できたことにより、クライアントのDX推進事例の1つとしても大きな評価を得られた。
  • フィリピン拠点での導入効果を確認後、米州拠点でもChatbotの運用に成功。今後も各グローバル地域への展開が予定されている。

成果に対する「お客様の声」

  • ブラザー工業株式会社プリンティング・アンド・ソリューションズ事業QMCS推進部企画グループグループマネジャーT.K様

    ブラザー工業株式会社
    プリンティング・アンド・ソリューションズ事業 QMCS推進部 企画グループグループマネジャーT.K

    今回導入したChatbotはブラザーグループの初の試みであり、販社でのPoCを経て関係部署との合意形成を図りながら、巨大市場への導入に成功しました。導入後も、ログ分析や仕様修正等の改善活動を行い、問合せに対する解決率を向上させながら利用数を伸ばしています。今後横展開をし、世界中のお客様に問題解決におけるエフォートレスな体験を提供すると共に、色々な分野でこの技術を応用し、更なるオペレーションの効率化を図っていくことを考えています。

プロジェクトの
アーキテクチャ図

  • Flow

    ① WebサイトやSNSを介して、カスタマーが「Chatbot」にアクセス

    ② 「SQL Server」にあらかじめ蓄積された質問フロー/会話フローに沿って対話を行い、カスタマーの問合せ内容を絞り込む

    ③ 途中フリー入力があった場合には、「LUIS(言語解析AI)」がカスタマーの入力文章を解析し、問合せ内容のキーワードを識別

    ④ ②または③のプロセスで得られた問合せ内容とそれに対する回答を「QnA Maker(AI)」が判別し、カスタマーに提示

    ⑤ カスタマーの解決に至らなかった場合は、「サポートチーム」と連携して有人対応を実施

    ⑥ 得られた会話ログに基づき、より有効な質問フロー/会話フローと回答に至るナレッジを「管理者」が更新。改善運用により回答精度を向上させる

Diagramプロジェクトのアーキテクチャ図