PROJECTProject

PROJECT08

顧客価値創造業務の推進に向けた
RPAガイドラインの策定および
ロボット開発と業務適用により
年間約13万時間の作業時間削減を実現

業界 メーカー
クライアント ブラザー工業株式会社
プロジェクト期間 2019年3月〜継続中

サマリー

「業務プロセス変革を通じた顧客価値創造業務へのリソースシフト」を中期戦略(2019〜2021)に掲げていたブラザー工業株式会社(以下、同社)では、IT活用による業務効率化の手段の一つとして、2018年より同社の現場社員によるRPAロボットの内製開発・運用のPoC(概念実証)を行なってきました。RPAとは、人がパソコン上で行う一連の作業をロボットで自動化するソフトウェアですが、これまで同社ではRPAを内製する上でのルールや仕組みが策定されていませんでした。様々なセキュリティリスクや改善が必要なロボットが増えてしまう可能性があり、その管理体制に同社は課題を抱えていました。そこで2019年に同社のIT戦略推進部とソフト技術開発部、並びにアビームコンサルティング、アビームシステムズ(以下、ABS)と連携したRPA事務局を設立し、開発品質の統一化を図るRPAガイドラインの策定と、社内浸透に向けた教育施策を実施しました。これらのほか、業務改革効果の高いRPAロボット等の開発をABSが担当し、本プロジェクトでは年間約13万時間もの同社作業時間の削減を実現しました。

プロジェクトの課題

  • 2018年のPoCでは、明確な運用ルールがない中でRPAの内製開発を進めた結果、様々なセキュリティ上のリスクや改善検討点が見つかり、管理体制とルールづくりを整備する必要があった。
  • RPAによる自動化の精度においては、業務の流れを俯瞰的に把握する力が求められるため、RPA内製開発の前段階に行う「業務プロセスの見直し」も社内全体の分析力を高める施策が必要だった。
  • RPAによる業務効率化の課題・改善策として、設計ユーザーの部署内における業務プロセスの効率化のみならず、連携する他部署にも効率化を波及するような全体最適化を検討する必要があった。
  • RPAロボットの運用においては、問題が起きた際の復旧対応や定期メンテナンスも現場社員で対応できるよう、RPAに関する知識・ノウハウを蓄積させる教育施策が必要だった。

課題に対峙した
ABSのアイデア

  • プロダクション&サービスソリューショングループN・K

    プロダクション&サービス
    ソリューショングループN・K

    非開発者である現場社員の方々が、一様に業務改革効果の高いRPAを内製するためのガイドラインづくりに注力しました。200ページに及ぶ当ガイドラインにはRPAの企画から設計開発、その後の運用保守、評価・廃止のフェーズに至るまでの技術情報が細かく盛り込まれており、開発を助けるRPAテンプレートや業務全体像を見直す分析シート等も駆使しながら「いかにして業務効率化をうまく引き出すか」という視点が欠かせませんでした。普段よりシステムの設計開発に慣れ親しんでいた私にとって、最上流と言えるコンサル領域にも踏み込んだ仕事の経験はとても新鮮で、学び得たものも大きいプロジェクトとなりました。

  • プロダクション&サービスソリューショングループY・S

    プロダクション&サービス
    ソリューショングループY・S

    私は主に当ガイドラインを浸透させるための講義開催や自己学習サイトの構築、不明点を解決するナレッジ・Tips集の作成を担当しました。他にも同社の現場社員から依頼されるRPA開発にも携わっています。以前、営業部門から製造部門に送る指示情報の自動化を相談された際には、依頼元の営業部門の効率化だけでは製造部門の確認作業がむしろ増えている問題点に気がつきました。業務効率化のためには、影響し合う複数部署にヒアリングし、深いレベルで全体業務を理解することが重要になるのですが、削減効果を最大化するRPAを提案し、それぞれの部署から「作業が捗るようになった」と喜ばれた時に大きな達成感を感じます。

Column

Column

人がパソコン上で行う一連の作業を自動化するRPAは、現在、同社の多岐に渡る事業部門で活用されています。例えば、一般事務部門では給与計算や勤怠管理等を効率化するロボットや、生産部門では在庫情報等のデータを収集・加工し、計画資料として自動でアウトプットするロボットなど、これらのRPAの内製開発が当プロジェクトのガイドラインに基づき進められています。内製開発の他にも、複数部門の業務にまたぐ複雑なロボットや年間100時間以上の削減が見込まれるロボットにおいては、ABSが現場社員の方へヒアリング・要件定義を行い、業務改革効果の高いRPAとして開発・納入をしています。

プロジェクトの成果

  • 当ガイドラインの策定、浸透により、同社によるRPA内製開発の品質が大きく向上した。またRPAテンプレートの導入徹底により、開発ロボットはすべてRPA事務局で把握できるようになり、幅広いセキュリティ上のリスクを未然に防いでいる。
  • 業務フローの見える化や効率化可能なポイントを整理できる「業務分析シート」を整備したことにより、様々な事業部門の設計ユーザーが業務改革効果の高いRPA開発に取り組めている。
  • RPA教育の拡充により、RPAに対する知識・ノウハウに長けた設計ユーザーの増加を促進した。これにより、RPAのメンテナンス作業や突発的な不具合が発生した際でも、社内でのスピーディな問題解決が図られるようになった。
  • 品質の高いRPA開発が同社に浸透したことにより、より複雑なRPA開発や業務削減効果の高い提案にABSのリソースを集中できるようになった。結果、ABSが開発したロボットは相当数に及び、同社全体の作業時間削減を強く後押している。

成果に対する「お客様の声」

  • ブラザー工業株式会社ソフト技術開発部M.S様

    ブラザー工業株式会社
    ソフト技術開発部M.S

    当ガイドラインの策定から各種教育施作の実施に至るアビームグループ様の細やかなバックアップにより、当社内のRPA開発の品質は大きく向上したと実感しています。定量的な成果においても、これまで開発されたRPAロボットにより年間約13万時間もの作業時間の削減を達成。その分の時間を顧客価値創造業務にシフトできていることに強く満足しています。将来的にはRPA開発のほとんどを当社社員で完結できるようにすることが理想ですが、その分、ABSの皆様にはAIを使った需要予測や画像解析など、RPAに限らない付加価値の高い業務改革提案を期待しています。

プロジェクトの
アーキテクチャ図

  • ① 同社のIT戦略推進部、ソフト技術開発部、並びにアビームコンサルティングと連携したRPA事務局を設け、RPAガイドラインの策定・導入を実施

    ② RPA教育(講義、自己学習サイト、ナレッジ・Tips集等)を拡充し、設計ユーザーの増加を促進

    ③ 複数部門の業務にまたぐ複雑なロボットや年間100時間以上の削減が見込まれるロボットにおいては、ABSが現場社員の方へヒアリング・要件定義を行い、業務改革効果の高いRPAとして開発・納入

    ④ RPAの案件着手時や本番稼働時に事前チェックを実施し、内製開発されたロボット管理を徹底

Diagramプロジェクトのアーキテクチャ図